コラム「自然に包まれた私たち」
短期大学生活科学科教授
大西 英一
背後に釧路湿原、阿寒の森と湖沼群、世界自然遺産
の知床などを控える釧路市
は、国内はもとより遠く欧
州のナチュラリストまでも
が一度は訪れたい自然の聖
地と言われている。アンデ
スのコンドルに比肩される
オオワシ、特別天然記念物
のタンチョウやマリモ、ウ
ルム氷河期の遺存種やその
後の温暖期に北上してきた
生物たちが混在し多様な生
態系を誇示する日本一の
大湿原、このエリアは年間
五百万人を超す人々が訪れ
る日本のホットポイントで
もある。
市内の高台に位置する緑
ケ岡学園の南には国の天然
記念物に指定されている
「春採湖」をはじめ、十ヘ
クタール余りの「武佐の森
緑地」に隣接し、さらに根
室まで続く変化ある海岸地
形が広がっている。特に釧
路短大キャンパスには半世
紀前に発見・登録された「ウ
ラホロイチゲ」をはじめ、
希少種が点在するシーク
レットゾーンまである。ま
た、時間をかけず現地集合
で巡検できる春採湖畔や、
スクールバスの利用で容易
に移動できる「武佐の森」
や「海岸線」などをフィー
ルドとした多彩で効率的な
教育実践が行われている。
地域と環境・食資源・生物
学などの講義や巡検は、学
生の新鮮な驚きと発見に溢
れ、加えて市民を対象とし
た「釧路自然再発見シリー
ズ」での湿原や森の探索、
講演会など、本学園の持つ
機動力と豊かな人材とがあ
いまったフットワークの良
さで好評を得ている。
地域に密着するという本
学園の理念は、恵まれた自
然と共生するかたちで更に
評価を高めつつある。